「安全」と「安心」は両立するのか?(その2)

先週に引き続き、「東京電力・福島第一原子力発電所処理水海洋放出」について。

政府は経済産業大臣が全国漁業協同組合連合会会長(全漁連)はじめ、様々な機関や団体に理解を求めるための面談を重ねている、そんな矢先、ある問題が起こった。

中国の税関が日本からの輸入水産物に対し、全面的な放射線検査を始めたのだ。しかも、税関に留め置かれた水産物は冷蔵品で通関に約2週間、冷凍品は同じく1ヶ月程度かかるということだ。水産物であるため一般的に日持ちはしない。通関に時間がかかれば当然商品として廃棄せざるを得ない。

処理水海洋放出は、今までは日本国内、特に福島県漁業関係者の問題であったが、輸出が始まると中国をはじめ一転して“外交問題”になる。

これで困るのは、言うまでもなく日本の輸出業者や漁業関係者であるが、それだけではない。中国側でも日本の魚を必要としている日本料理店や寿司屋も困るのだ。

この処理水海洋放出問題は、ある程度問題が大きくなる予測はできていたことではあるが登場人物(関係者)が日に日に多くなり判断をまちがえば取返しがつかなくなる恐れもある。

先週も取り上げたように、「科学的に安全だから」とはいっても「はい、そうですか」とは受け入れないだろう。

とうとう外交問題となったこの処理水海洋放出問題。

「科学的な安全」と「社会的な安心」。この二つは両立しうるのか?「社会的な安心」を身をもって示さないと関係事業者の事業再開・復旧ははるか遠い先となってしまう。

2023年7月23日